ジョー・ウォルトン「図書室の魔法」
図書室の魔法 上 (創元SF文庫) (2014/04/28) ジョー・ウォルトン 商品詳細を見る |
「さらに彼女は、もしこの図書館に読みたい本がなかった場合、十六歳未満の登録者は図書館相互貸借制度(インターライブラリー・ローン)が無料で利用できることを教えてくれた。要するに、わたしが読みたい本の書名と著者名を伝えるだけで、彼女たちがその本を取り寄せてくれるのである。
(中略)
インターライブラリー・ローンこそは、世紀の大発明であり、人類文明の精華である。
実際、図書館とは本当に素晴らしい施設だと思う。書店より素晴らしいくらいだ。書店は本を売ることで利益を得るが、図書館は一切お金を取ることなく、所蔵している本を親切に貸してくれるのだから。」(上巻 p.100)
「わたしは変化しながら成長し、大人になってゆく。どこに引っ越そうと、図書館の利用者登録は真っ先にすませる。そのうち、別の惑星の図書館を利用できる日がくるかもしれない。」(下巻 p.266-267)
寄宿学校の図書室、町の公共図書館、父親の蔵書、読書クラブ。そして、魔法とフェアリー。
本とともに成長していく少女の十五歳の1年間を、日記形式で描いた物語です。
「世界中の図書館で働くすべての司書と、今も毎日あの図書館のカウンターに座り、人びとに本を貸し出している司書たちのために。」と上巻の冒頭で捧げているように、本(特にSF)と図書館がこれでもか!というほど登場します。
図書館施設や制度についてはあまり詳しくは描かれていませんが、1979年のイングランドでインターライブラリーローンがしっかりと根付いていたことには驚きました(しかも十六歳以下は無料だなんて!)。
この主人公のようにたくさん読んでくれる生徒がいれば、図書室もやりがいがあるだろうなぁと感じました。
作中にはたくさんの書名が出てきますが、下巻の巻末にちゃんとブックリストが載っているのが嬉しいです。
また、原題は「Among Others」で、読み終わって見ると本当にぴったりな言葉です。
邦題の「図書室」は学校の図書館という意味合いが強いような気がするので、「図書館」でも良かったのではないかなと思います。しかし、この原題を日本語に訳すのは難しいですね。
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ジョー・ウォルトン「図書室の魔法 上下」東京創元社 創元SF文庫、2014
Jo Walton "AMONG OTHERS" 2011
利用:閲覧、貸出、読書クラブ
司書:学校司書(女性)、司書(女性、男性)